”頭のいい人ほどマジックで快く騙される”という通説についてマジシャンが考察

こんにちは

僕は色々と肩書き(自称)があるのですがその一つに”マジシャン”があります。
大学のマジックサークルに所属していて、ほぼ毎週マジックショーをやっています。

一応、僕はマジック歴は今年で13年目になります。
プロほど上手いっていうわけではありませんが、それなりの
・テクニック
・レパートリー
・経験
・話術
はこのキャリアで培われていると思います。

マジックをある程度長くやっていると色々な通説を学びます。
例えば
・サーストンの三原則
というマジックをやる上で重要な3原則が暗黙の了解としてマジシャン界隈にあったりします。

そんなマジシャンの業界でよく言われるセリフに
”頭のいい人ほどマジックを好む”、”頭のいい人ほど快く騙される”
というものがあります。

よく、「タネが全くわからないのは、自分がバカだからなのかな?」というお客さんが呟いたりするので、そのフォローで使われたります。
しかし、僕はこのセリフがただのフォローで使われる言葉ではないと思っています。そこで、今回はこの”頭のいい人ほどマジックで快く騙される”という事について考察をしていきます。

 



 

まず、考察をするにあたって”頭のいい”ということの定義をある程度明確にしておきましょう。よく”頭のいい”という言葉では”テストでいい点数が取れる”と同義で使われることが多いですが、今回の文脈では”頭のいい”ということを”世渡り上手”や”論理的、合理的な考えができる”という事にします。

さて、まずマジシャンをやっていると毎回色々なタイプのお客さんに出会います。
今回はお客さんを3つに大別します。
(1)素直に現象を観て反応してくれる人
(2)YouTubeか何かで聞きかじったタネを仲間に説明してドヤ顔する人
(3)事あるごとにマジシャンに突っかかってきて進行の邪魔をする人

これには地域差や、国民性もあると思いますが僕の感覚値としては
6:1:3くらいの比でいるように感じられます。
回数は少ないのですが、アメリカにいっていた時にも何度かマジックを披露したことがあるのですが、その時は
10:0:0の比率でした。ただ、アメリカでの経験ではサンプルが日本のそれと比べて圧倒的に少なかったので、運が良かったという可能性がありますが、テレビやネットの動画などでマジックを見る態度の差を見ていると結構差があるのかなと個人的には思っています。

さて、僕だけではないとは思いますが、マジシャンはだいたい各々のルーティンを持っています。
僕の場合は主にクロースアップマジックという、テーブルの上でお客さんの目の前で、手を伸ばせばすぐに届く距離でマジックを披露します。
そんなクロースアップマジックでは、カードマジック、コインマジックなど小物を使ったマジックがメインです。
クロースアップマジックはステージマジックと違って、大掛かりな道具の搬入などがないために、道具の交換が不自然になってしまう傾向があります。1回だけしかマジックをやらないのであれば問題はないのですが、だいたいは4、5種類のマジックを披露します。そうなると仕掛けありのカードだと連続でマジックができないという事になります。そこで、不自然にならないように道具を交換するか、仕掛けのないカードや道具でテクニックを使って連続でマジックを続けるかのどちらかになります。僕は個人的に後者のタイプで、そのままポーカーやブラックジャックができる普通のデックしか使わずに、テクニックのみで連続でマジックを披露します。こうする事で途中でカードを改められた時のリスクを回避しています。

しかし、そうなってくるとどの順番でどのマジックをするとウケるかを考えなければいけません。最初にある程度受けるものを持ってこないと最初に心を掴み損ねてしまいますが、クライマックスを迎える前に燃え尽きてしまうのもダサいです。

僕の場合、何年も人前で色々なマジックを披露しているので
どのマジックがどういうタイプの人に受けるのかを把握していますし
万人に受けるマジックも感覚的にわかります。

このデータ蓄積を利用して、僕は1回目では地名度が高く、万人ウケするマジックを披露してお客さんのタイプを判断します。そこで2回目以降のマジックで用意していた複数のルーティンのうち、どのルーティンを使うかを決めます。

 

さて、少し話が戻るのですが
(1)”素直に現象を観て反応してくれる人”のタイプであれば今自分が用意できている最高のマジックのルーティンを心置きなく使うことができます。ここで披露できるマジックは多少のリスクがあるものでも挑戦することができるので、最高レベルのパフォーマンスを披露することができます。

もし(2)”YouTubeか何かで聞きかじったタネを仲間に説明してドヤ顔する人”のタイプであれば、マジシャンの界隈でもあまり有名ではない、あるいはオリジナルのマジックで対応をします。ちょっとマジックを知っている人からすればわからないのである程度楽しいのでしょうが、お連れ様全員がマジック通であることは珍しいです。なので自慢げにお話をしている人からすれば楽しいかもしれませんが、テーブルや場の空気という面で見てみれば、悪くはないのですがベストではないという感じになります。

問題なのが(3)事あるごとにマジシャンに突っかかってきて進行の邪魔をする人の場合で、こういうお客さんも一定数存在する以上、対応策はある程度は用意しておきます。しかし、かなりの強硬策になってしまうのでフィナーレが偏ったパターンのマジックの連続になりがちになってしまいます。更に酷いお客さんの場合にはマジシャンは本来予定していた時間や回数よりも早めに引き上げます。お客さん一人であれば問題はないのですが、マジックを楽しみに来てくれた同じテーブルのお連れ様に対しては非常に申し訳ない気持ちになりますし、お連れ様は楽しみにしていたものに邪魔が入ってみれなくなってしまったのでテーブルの空気も悪くなってしまうでしょう。

 


さて、本題の”頭のいい人ほどマジックで快く騙される”ということに関してですが
どうしてこの命題がよく言われているのか、もうすでにある程度お気づきになったと思います。

マジシャンは毎回同じことをするのではなく、お客さんのタイプや行動によって
披露する内容を、不自然にならないように変更しています。
したがって、マジシャンが気持ちよくのびのびとマジックができる環境を作ってくれるお客様の場合は、マジシャンも最高のパフォーマンスができます。
そういった環境を毎回作れるお客さんは、多くのマジシャンの様々なベストパフォーマンスを見れるわけですから、きっと楽しいと思います。

一方、毎回マジシャンの邪魔をするようなお客さんには、同じような傾向のマジックばかりしか消去法で残らないので、先ほどの例と比較して楽しみは少ないでしょう。

 

そうであるなら、マジシャンがのびのびとできる環境にした方が
マジシャンにとってもお客様にとっても最高の状況が出来上がるわけです。
そこまで考えが及んでいる、あるいは考えなくとも直感的にそれがわかっているというのは、今回定義した”頭がいい”ということに該当するのではないでしょうか。

そして、これは推察ですが
このような配慮がマジシャンにもできる人は、きっと別のシチュエーションでもそうなのでしょう。例えば会社などでも仲間にいちいち突っかかっている人の場合、仲間が従順であればその人の想定以下のことはできますが、想定を超える成果が出ることはないでしょう。
逆に、仲間にのびのびと活動できるような環境を用意できる人であれば
想像以上の成果が出せることも比較的多いと想像しています。

仮にこの想像が正しいとしたら
それこそ定義している”頭のいい”に当てはまるのではないでしょうか。

 

 



 

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